南面の地上0mにおける本件道路に起因する日陰時間は,冬 至日が8時間,立春が3時間24分,2月20日が2時間19分であるとされ,原 告X8宅の南面の地上0mにおける同日陰時間は,冬至日が8時間,立春が3時間 14分,2月20日が2時間13分であるとされている。
しかし,公共施設による日照被害について地上0mでの日陰の検討が必要である という原告らの主張を裏付ける法的根拠はなく,建築基準法56条の2,名古屋市 中高層建築物日影規制条例(昭和52年名古屋市条例第58号)によれば,第2種 住居地域においては,高さが10mを超える建築物について地上4mの高さでの日 影時間を基にした規制がされているのであって,建築物に関する日影規制に照らし ても,原告らの主張は理由がない。
そして,原告らが原告X7・同X5宅と同X8宅に関して提出する日影図は,2 階(開口部が真南に面する居室)における日陰の状況を示すものではなく,原告X 7・同X5宅,同X8宅が本件高架部の設置に起因する日陰による被害が上記(ア) の損失補償の対象となる程度に達していることを示すものではない。
(ウ) したがって,本件区間の道路建設によって生ずる日照被害が関係法令上損 失補償の対象となる程度に達するものとは認められないから,日照被害を理由とし て平成4年決定が違法であるとの原告らの主張は理由がない(また,上記日照被害 を理由として本件変更認可自体が違法であるとも認められない。)。
イ公害(大気汚染,騒音等)について
(ア) 本件区間の道路施行について,関連法令等に照らし環境影響評価を実施す ることが義務付けられているとは認められないことは後記のとおりであるが,以下, 本件区間の公害(大気汚染,騒音等)の程度が環境基準等に適合するか否かを検討 することする。
(イ) 公害(大気汚染,騒音等)に係る環境基準は以下のとおりである。
a 大気汚染について
「二酸化窒素に係る環境基準について」(昭和53年環境庁告示第38号)は, 二酸化窒素に係る環境基準につき,1時間値の1日平均値が0.04ppmから0.0 6ppmまでのゾーン内又はそれ以下であることと規定している。
また,「大気の汚染に係る環境基準について」(昭和48年環境庁告示第25 号)は,浮遊粒子状物質に係る環境基準につき,1時間値の1日平均値が0.10m g/m 以下であり,かつ,1時間値が0.20mg/m 以下であることと規定している。
3 3 なお,上記環境基準が定める1時間値の1日平均値は,二酸化窒素については, 日平均値の年間98%値(年間の1日平均値のうち,低い方から数えて98%目に 当たる値)を,浮遊粒子状物質については,日平均値の年間2%除外値(年間の1 日平均値のうち,高い方から数えて2%の範囲にある値を除外した後の最高値)を 用いることとされている(丙12,48)。
平成4年公害防止計画及び平成19年公害防止計画において,大気汚染について は,上記各告示が定めた環境基準をもって同計画の目標とすることとされた(丙4 2,43)。
b 騒音
「騒音に係る環境基準について」(平成10年環境庁告示第64号)は,専ら住 居の用に供される地域を「A地域」,主として住居の用に供される地域を「B地 域」とし,A地域のうち2車線以上の車線を有する道路に面する地域における騒音 の基準値を,昼間は60dB以下,夜間は55dB以下と,B地域のうち2車線以 上の車線を有する道路に面する地域における同基準値を,昼間は65dB以下,夜 間は60dB以下と規定している(騒音の評価手法は,等価騒音レベルによるもの とし,時間の区分ごとの全時間を通じた等価騒音レベルによって評価することを原 則とする。)。
平成19年公害防止計画において,騒音については,上記告示が定めた環境基準 をもって同計画の目標とすることとされた(丙43)。
なお,平成4年公害防止計 画においては,「騒音に係る環境基準について」(昭和46年5月25日閣議決 定)に基づいて騒音の基準値を定めていたが(丙42),当時の騒音の評価手法 (騒音レベルの中央値によることを原則とするもの)は,その後の騒音影響に関す る研究の進展,騒音測定技術の向上等によって,等価騒音レベルによることが相当 であると判断され,平成10年環境庁告示第64号により改正された(「騒音に係 る環境基準の改正について」《平成10年9月30日環境庁大気保全局長通知》)。
本件区間の事業地の両側境界から20mの範囲は,第2種住居地域に指定されて おり,上記B地域に該当する。
その北側は第2種中高層住居専用地域(ただし,東 山配水場の周辺は第1種低層住居専用地域)に,その南側は第1種中高層住居専用 地域(ただし,日泰寺の周辺は第1種低層住居専用地域)にそれぞれ指定されてお り,上記A地域に該当する。
c 振動
振動規制法16条1項は,市町村長が,指定地域内における道路交通振動が環境 省令で定める限度を超えていることにより道路の周辺の生活環境が著しく損なわれ ていると認めるときは,道路管理者に対し当該道路の部分につき道路交通振動の防 止のための舗装,維持又は修繕の措置を執るべきことを要請し,又は都道府県公安 委員会に対し道路交通法の規定による措置を執るべきことを要請するものとすると 規定し,同法施行規則12条,別表第2は,上記環境省令で定める限度につき,第 1種区域(良好な住居の環境を保全するため,特に静穏の保持を必要とする区域及 び住居の用に供されているため,静穏の保持を必要とする区域)において,昼間は 65dB,夜間は60dBと規定している(平成4年当時の同法施行規則《平成5 年総理府令第47号による改正前のもの》12条,別表第2においても,振動の測 定等の定めが異なるものの,要請限度の値の定めは同一である。
国税庁は「利子」に該当しないという公的見解を表示していたこと
国税庁調査課主査藤村和男「週刊税務通信2519号」や国税庁調査査察部調査課秋山秀仁「税理41巻3号」では「デット・アサンプション契約については,…… 経済的実質を重視して,原則的に契約実行日に債務の一括弁済が行われたものと同視してこれに伴う償還差損益の計上を行うことを認めている。」旨の記載がなされている。このように国税庁職員が顕名で課税実務を解説し,あるいは課税庁の認識を反映している等と認められる記述がされ,国民に対して指針的なものとして一定の影響力を持ち,国民にとっても,そこに示された内容について一定の信頼を置くものと推認されることに照らせば,国民の信頼を保護すべき程度にまで課税庁による公的見解の表明があったということができる。 以上のとおり,控訴人には,「行政上の制裁を課すること」が「不当あるいは苛酷とされるような事情」が存在するから,国税通則法67条1項但書の「正当な理由」が認められる。
平成4年公害防止計画において,振動については,「大部分の地域住民が日常生 活において支障がない程度」を目標とすることとされ(丙42),平成19年公害 防止計画においては,振動に関する目標は記載されていない(丙43)。
(ウ) 参加人は,平成16年2月,株式会社オリエンタルコンサルタンツに委託 して,池内猪高線に係る平成16年交通量推計を実施したが,その方法は,対象と なる道路ネットワーク上の交通需要,すなわち対象となる道路ネットワークの属す るゾーン内外のOD交通量(origin-destination交通量)を,ネットワークシミュ レーション法(道路ネットワークをノードとリンクの形でデータ化し,ゾーン間の 最短経路《時間,距離》をシミュレーションによって検索して,その経路上のリン クに各OD交通量を配分する手法)により交通量を推計するというものであり,こ の推計手法により,池内猪高線の平成32年の交通量は1日当たり1万3500台 となるとの結果を得た(丙47)。
参加人は,平成16年7月から平成17年4月にかけて,平成16年交通量推計 の交通量(1日当たり1万3500台)を基に本件区間の環境調査を実施し,その 結果に基づいて,将来本件区間を自動車が走行することにより,大気,騒音,振動 にどの程度の影響が及ぶかについての本件環境予測を行ったところ,次のとおりの 予測結果が得られ,いずれも上記環境基準及び要請限度を満たしていることが確認 された(丙12。
なお,測定位置《平面部○A,高架部○B,平面部○C》につき,別紙 図面参照)。
a 二酸化窒素(ppm)
年平均値日平均値の 現況濃度道路寄与濃度合計年間98%値
平面部○A 0.020 0.0018 0.0218 0.043
高架部○B 0.020 0.0020 0.0220 0.043
平面部○C 0.021 0.0057 0.0267 0.049
※日平均値の年間98%値の環境基準は0.04〜0.06ppm
b 浮遊粒子状物質(mg/m )
3年平均値日平均値の 現況濃度道路寄与濃度合計年間2%除外値
平面部○A 0.023 0.0005 0.0235 0.055
高架部○B 0.023 0.0005 0.0235 0.055
平面部○C 0.025 0.0016 0.0266 0.063
※日平均値の年間2%除外値の環境基準は0.10mg/m 以下3c 騒音(dB)
予測値
昼間夜間
平面部○A 道路境界B地域64 57
道路境界から20m地点A地域59 51
高架部○B 道路境界B地域62 55
道路境界から20m地点A地域58 50
平面部○C 道路境界B地域65 58
道路境界から20m地点A地域59 51
※環境基準は,B地域の昼間が65dB以下・夜間が60dB以下,A地域の昼間が60dB以下・夜間が55dB以下
d 振動予測(dB)
予測値
昼間夜間
平面部○A 50 44
高架部○B 42 37
平面部○C 51 46
※第1種区域の要請限度は,昼間が65dB,夜間が60dB
※振動の予測値は道路境界の地表の値
(エ) 原告らは,平成16年交通量推計による交通量(1日当たり1万3500 台)について,参加人が平成14年7月に株式会社オリエンタルコンサルタンツ に委託して池内猪高線に係る都市計画道路整備効果調査を実施した際には,平成2 7年の交通量は1日当たり2万1921台とされており(甲97),また,平成 17年度名古屋市一般交通量概況において池内猪高線の開通済み区間の12時間の 交通量は1万3842台とされている(甲84の1・2)旨指摘する。
の点については,参加人は,平成16年6月30日に開催された平成16年度 第1回名古屋市公共事業評価監視委員会において,平成14年7月の調査結果によ る交通量(1日当たり2万1900台)は,中途半端なネットワークを前提として いた上,交通量の上限値が設定されていなかったため,池内猪高線に過度な交通量 が集中した結果得られた値であり,平成16年2月の調査結果においては,ネット ワークを修正し,バランス良く交通量配分を実施した結果,交通量は1日当たり1 万3500台との結果を得た旨の報告をしたことが認められるから(丙55),平 成16年交通量推計による交通量(1日当たり1万3500台)は,平成14年7 月の調査結果の不備を修正して得られたものと認められる。
の点については,平成17年度名古屋市一般交通量概況に記載されている12 時間の交通量(1万3842台)は,本件区間から東へ約2程度の地点(千種区 富士見台5丁目)で調査した結果の値であり,同調査区間の東西には,志段味田代 町線(谷口,姫ヶ池通り1丁目,末盛通り2丁目等を経由する道路)のほか,茶屋 ヶ坂牛巻線(茶屋が坂,自由ヶ丘3丁目,猫洞通り2丁目等を経由する道路),平 和公園線(平和公園北,猫洞通り1丁目,平和公園口等を経由する道路)等が交差 し,本件区間とは道路の利用状況等が異なるものとうかがわれるから,上記12時 間の交通量(1万3842台)をもって,平成16年交通量推計の交通量(1日当 たり1万3500台)が直ちに不合理であるということはできない。
(オ) なお,仮に本件区間における交通量が1日当たり1万3500台を一定程 度超えることになったとしても,名古屋市環境局が,平成18年度に実施した大気 汚染の常時監視の結果によれば,池内猪高線の南側に位置する広小路線の千種区役 所付近(交通量1日当たり約5万台,道路勾配約3.4%)において,二酸化窒素 の日平均値の年間98%値は0.044ppm,浮遊粒子状物質の日平均の2%除外値 は0.069mg/m であり,いずれも環境基準を達成していたことが認められる3 (丙48,弁論の全趣旨)から,本件区間における二酸化窒素及び浮遊粒子状物質 の測定値は,1日当たり約5万台が通行する広小路線の千種区役所付近における上 記測定値よりも下回るものと考えられる。
(カ) したがって,本件区間の道路建設によって生ずる公害(大気汚染,騒音 等)が環境規準及び要請限度を上回る程度に達するものとは認められないから,公 害(大気汚染,騒音等)を理由として平成4年決定が違法であるとの原告らの主張 は理由がない(また,上記公害(大気汚染,騒音等)を理由として本件変更認可自 体が違法であるとも認められない。)。
ウ原告らは,景観権(景観利益)の侵害,眺望の阻害・圧迫感の被害を理由 に平成4年決定が違法であると主張するが,景観権(景観利益)の侵害,眺望の阻 害・圧迫感の被害は,環境基本法2条の公害の定義に含まれておらず,平成4年決 定の根拠法令である都市計画法及びその関連法令が,これらの被害を受けない利益 について,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにと どめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする 趣旨を含むものと解することはできないから,原告らの景観権(景観利益)の侵害, 眺望の阻害・圧迫感の被害に係る主張は,平成4年決定の違法性に結びつくものと はいえない(また,景観権(景観利益)の侵害,眺望の阻害・圧迫感の被害に係る 主張は,本件変更認可自体の違法に結びつくものともいえない。)。
なお,都市の景観についての景観利益が法律上保護に値するものとされるのは, その景観が良好な風景として人々の歴史的又は文化的環境を形作り,豊かな生活環 境を構成していることが必要であるところ(国立市最高裁判決),本件区間の周辺 地域は,名古屋市都市景観条例に定める都市景観整備地区(市長が,都市景観基 本計画の定めるところにより,重点的にすぐれた都市景観を創造し,又は保全する 必要があると認める地区として指定したもの)にも,都市計画法に定める風致地区 (都市計画上の地域地区の一つで,都市の風致を維持するため定める地区)や特別 用途地区(用途地域内の一定の地区について,その地区の特性にふさわしい土地利 用の増進,環境の保護等の特別の目的の実現を図るため用途地域の指定を補完して 定める地区)にも,また,特に町並みを保存する地域(名古屋市町並み保存要綱) にも指定されていないこと,原告らを含む地域住民が本件建築協定を締結したの は本件変更認可の後の平成19年2月27日であること,本件高架部の周辺(本 件区間のうち市道田代第257号線より西側)は,高度地区の指定のない第2種住 居地域(高度地区の指定なし)又は第1種・第2種中高層住居専用地域(20m高 度地区)に指定されており,本件高架部(最大高さ約7.7m)より高い建物を建 築することが可能な地域であることなどからすれば,原告らの主張をしんしゃくし たとしても,本件区間の周辺地域の景観について,法律上保護に値する景観利益の 存在を認めることはできない。
また,原告らの主張する眺望の阻害・圧迫感についても,上記の事情に照らせば, 本件高架部の周辺は,建物の建築によってある程度眺望が阻害されることが予定さ れていた地域であるというべきであるから,原告らの主張する眺望の阻害・圧迫感 を受けない利益は法的保護の対象になるものとは認められない。
主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1 請求
被告は,原告らに対し,422万8063円を支払え。
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